確率

 前ページの問題を考える上で「同様に確からしいもの」が何なのか?今一度考えてみましょう。
 そもそも「同様に確からしい」とは何なのかという話ですが、高校での意味としては「各事象が同程度で起こるような状態のこと」などを意味しておりますが、非常に曖昧な定義の ように見受けられます。ですので、次にあげる例題の中で「同様に確からしい」という状態を感覚的に身につけて下さい。



ある普通のコインを投げたとき表が出る事象と裏が出る事象は同様に確からしいか?

これは同様に確からしいといえるでしょう。通常のコインであれば表・裏は同程度に起こりうると考えられます。

あるサイコロを投げた時、それぞれの目の出る事象は同様に確からしいか?

これは同様に確からしいといえるでしょう。通常のサイコロであれば1?6の目は同程度に起こりうると考えられます。

明日の天気が雨になる事象・晴れになる事象は同様に確からしいか?

この場合は同様に確からしくないといえるでしょう。明日の天気が雨になる・晴れになる事象が同様に確からしいとすれば
明日が雨になる確率・晴れになる確率は等しくなくてはなりません。このようなことは断定できませんね。

普通の54枚のトランプの山からランダムに1枚のカードを引いたときそれがジョーカーである事象・ジョーカーでない事象は同様に確からしいか?

これは同様に確からしくないです。もし同様に確からしいならば2回に1回はジョーカーが出ることになります。このようなことは 日常の経験からもありえません。正しくは54枚のカードが出る事象それぞれが同様に確からしい、と言えるでしょう。


これまでの問題は難なく分かった人も多いんじゃないか、と思います。しかし前ページの問題には引っかかった人も多いはずです。
もう一度問題に目を当ててみましょう。

確率
(1)右図においてA地点からB地点まで行く最短経路は何通りか?
(2)右図においてA地点からC地点を通ってB地点まで行く最短経路は何通りか?
(3)右図においてA地点からB地点まで最短経路で進む時、C地点を通る確率を答えなさい。



確率 (1)から順に考えていきます。
最短経路ということなのでA地点をスタートした後は必ず右または上に進む動作をすることで最短経路を選ぶことが出来ます。
右図のように全パターンを考えれば(1)は4通りだと分かります。

(2)については右の全パターンの中でCを通っている物は一つしかないので、(2)は1通りだと分かります。

とすると(1)・(2)の結果を踏まえれば全体4つのうちで該当している物は1つだけ。すなわち(3)で求める確率は 確率 だ、と考えるのは自然な考え方にも見えます。
しかし、このように答えを出す事が出来るのはA地点を出発した人が無作為に右上図の4つのパターンの中から、AからBに向かう 方法を決めている時だけ、すなわち上の4つのパターンが同様に確からしいということを暗黙のうちに仮定していたことになります。


確率
 しかし、もしA地点を出発した人が右図のように上に進むか・右に進むか を同様に確からしく選んでいたとするとどうでしょうか?恐らく無意識に歩いているならば、このように行動を決定することの方が自然じゃありませんか?
上に進んだ時のみC地点を通るので、求める確率は 確率 となります。


理解出来ましたでしょうか?
このように何が同様に確からしいのかということを捉え違えると答えは変わってくるということです。
よって上の問題は何が同様に確からしいのか分からないため、確率は不明と書くのが一番の正解かと思われます。

この問題は意地悪な例ですが、入試問題でも「コインを投げて…」「サイコロを振って…」という記述しかなく、同様に確からしいと判断できる要素が書いていないことも多々ありますので、そういった場合には常識で何が同様に確からしいのか判断する必要があるのです。

 このように書くと一見難しそうですが、実際にやってみると簡単です。特に変なコインで無ければ表と裏が出る確率は同じと仮定すれば良い、というだけの話です。
 しかし、確率の問題を解く時にはまず最初に何が同様に確からしいのか判断するということを必ず行う、ということを忘れないようにして下さい。